激減する社会・法改正に挑む
90年代初頭から始まった一連の新自由主義改革により、日本の社会構造とあらゆる法制度が一変し、いまや市場原理主義が支配するアメリカ型の「弱肉強食」社会へと一変しつつある。
7月10〜11日、東京・総評会館で開かれた「05年中央幹部学校」では、こうした経済のグローバル化と政府の規制緩和策で相次ぎ改正された労働法の特徴と問題点を整理し、弱肉強食化する日本の企業社会のなかで問われる労働組合のあり方を議論。いま、求められる労働組合の社会的役割と連帯労組の今後の組織展望を語り合い、中央定期大会で活動計画を具体化することが示された。
新たな情勢
変化を把握
冒頭に、小谷野書記次長が今幹部学校で学ぶ目的を提起。日本社会の枠組みが様変わりするなか、企業のあり方も法制度も大きく変化していること。こうした動向は、従来型の労働運動の基盤が大きく変動していることを意味し、労働基準法や労働組合法がいまや、過去のものになりつつあることを指摘。社会や法制度の変化を把握し、連帯労組の組織の発展方向にむけての課題を早急に議論し、9月の中央定期大会の新運動方針で具体化することを呼びかけた。
労基法、労組法は過去のものに
【第1課題】は、東京都労働相談情報センター嘱託員の芝威氏が「労基法、派遣法、高齢者雇用安定法、時短法などの改正ポイントと問題点」を講義。
労働法制が変化しつつある理由として、政府の規制緩和策と雇用形態の大きな変化を指摘。パート、派遣、契約社員、フリーターなど不安定雇用や非正規職の増大によって、15年には就業人口の40%を超える統計予測となっていること。労組組織率が20%を割るなか、非正規職の増大は企業内組合では加入できないことから、労組の社会的影響力が低下し、危機的状況となることを解説した。
具体的には、労基法の主な改正点として・有期労働契約の期間が、原則1年から3年に延長、・解雇権濫用の明文化、・裁量労働制の導入条件の緩和。派遣法の改正では、派遣期間が1年から3年に延長。禁止されていた製造業への派遣が解禁され、派遣事業許可手続きが簡素化される。労働組合法の改正では、労働委員会の計画的な審査と迅速・的確な事実認定、地方労働委員会に対する規制緩和、和解の促進が特徴点であることなどが解説された。
労組の社会的存在を排除
【第2課題】は、森井利和弁護士が「労働契約法制の特徴と問題点」について講義。
労働契約法制とは、厚生労働省の労働政策審議会で検討されている新たな法制度で、企業と労働者の労働契約の枠組みを決めようとするもの。今年4月に発表された労働契約法制中間報告「今後の労働契約法制のあり方に関する研究会中間とりまとめ」の問題点を解説した。
労働契約法は、雇用形態の急激な変化や労働条件決定の個別化、労組組織率の低下などを背景に必要性が謳われているが、労働者保護法である労基法の機能を低下させる。労働者代表制にあらざる「労使委員会」で、5分の4以上の多数で就業規則の変更を認めるとされる。
もしこれが実行されれば、労組の基本的役割である労働条件や労働協約締結にむけた労使協議から労組が事実上、排除される。また、「解雇の金銭解決制度」として会社が一定の金銭を払えば解雇が有効とされるなど、労組の存亡に関わる重大な問題点があることが指摘された。
組織化への大きな武器に
【第3課題】は、五百蔵洋一弁護士が「労働審判制度の特徴と労組の課題」について講義。
労働審判制度は、未組織労働者の増大や個別労使紛争の激増、スピードアップの時代という社会的要請のもとで昨年4月に衆参法務委員会で審議・可決成立し、来年4月からスタートする。
解雇や労働条件引き下げ、いじめ、残業代の未払い、セクハラ等が個別労働紛争の典型。申立人は正社員に限らず、パートや派遣労働者、外国人労働者、請負名目の労働者も可能。管轄は各地方裁判所で、労働審判官(裁判官)と2名の労働審判員の計3名が労働審判委員会を構成し、合議により審判を行う。 特徴は、審理のスピードアップで、3回以内(3ヵ月)の期日で審理を終結し、審判を行うこと。労働審判は「裁判上の和解」と同一の効力を有し、強制執行が可能。当事者双方が合意した時は、調停が成立する。
労組にとっては実務対策がカギとなり、対応能力によって社会的存在感を拡大し、組織拡大への大きな武器となる。
社会的弱者に根ざす基盤を
翌11日は、小谷野書記次長が「日本型企業社会の転換と連帯労組の組織化の課題」を提起。社会や法制度の大きな変化に対応すべき連帯労組の役割と課題を議論した。
特徴的には、旧来型の正社員中心の労働運動は社会的基盤を喪失し、自己改革を重ねなければ生き残ることができないこと。非正規職と社会的弱者に、より深く新たな運動と組織基盤を築く努力が絶対的に必要であることを確認。当面の重点課題として、中央及び各支部の次世代育成、教科書作成と学習活動、組織拡大活動、労働審判対策などを具体化し、9月の中央定期大会で提起することとした。 |